和田秀樹・池田清彦『オスの本懐』(新潮新書)を読む。高齢者専門の精神科医和田秀樹とユニークな生物学者池田清彦の対談。池田清彦は地球温暖化はデマだ等と過激な主張を繰り返している生物学者で、ダーウィンの進化論も批判している。
結構売れている本のようだが、率直に言って雑談集、ほとんど意味のない対談がこのような本になっている。私が編集者だったら、原稿を没にするか、改めて対談をやり直してもらうだろう。
それでもいくつか気になるところを拾ってみる。
新宿歌舞伎町のマンションの一室で無修正動画のDVDを売っていた業者の摘発が報じられたニュースについて、
和田秀樹 警察が踏み込んだ時、居合わせた客のほとんどが80代だったそうで、ニュースではそれも含めて、いい歳をして……とお客をバカにしているようだった。でも、かの文豪永井荷風や谷崎潤一郎のように、老いてもエロチシズムに従う男性は粋だ、という評価がかつては主流でした。渋沢栄一には妻の他に複数の愛人がいて、実子は総勢17人以上。最後の子どもは68歳の時の子という逸話まであり、男の甲斐性として一目置かれた。つまり、そこには齢を重ねた男性が活力をキープするという側面があったわけです。もちろん今とは時代状況が違いますが、妾はともかくポルノぐらい自由に観られたらいいのに、という話です。とりわけ男性ホルモンの多寡が健康維持にダイレクトにかかわる70代以上は、AVくらい大目にみてもいいと思うんです。
そういえば、ホテルニュージャパン火災で刑務所へ入った横井英樹も晩年愛人と幼い子どもに出勤を見送られている写真が『フォーカス』に載っていた。
和田 明治天皇には女官、側室が何人もいましたね。
池田明彦 5人いて子どももたくさん生まれたけど、若くして亡くなった人も多かった。皇位を継承した大正天皇も、皇后ではなくて側室との間にできた息子。そういう背景もあって大正天皇は女官制度をやめて、昭和天皇がそれを引き継いで現在に至る。極端な話だけど、皇族がイギリス王室みたいにしょっちゅう不倫するようになれば、日本人の感覚も少しは変わるのかもしれないな。
「ダンバー数」について、
和田 仲間同士のはずなのに互いの本音がわからない――これがポリコレ社会の温床ではないでしょうか(ポリコレ=ポリティカル・コレクトネス)。何を言ったらアウトか、どこまでがセーフか、個人で判断がつかないからこそ、ポリコレという暗黙のルールに従わざるを得なくなってしまった。
池田 イギリスの人類学者ロビン・ダンバーが提唱した「ダンバー数」がまさしくそれだ。人間は150人くらいまでの集団なら他人の本音がわかるけど、150人以上になると意思疎通が難しくなっていろいろと揉めごとが増えてくるのでルールが必要になる。要はダンバー数以下なら明示的なルールがなくても、なんとなく上手くいくということです。
これも、昔従兄弟が、部下が150人を超えると名前と本人を一致するのが難しくなると言っていたけど、でもこれはちょっと違うかな?
ついでに皇位継承は男系に限るというのなら、側室を認めるべきだろう。一夫一妻は守らせて男を産めというのは酷ではないか。