ギャラリー現の井上修策展「エアーボール」が興味深い



 東京銀座1丁目のギャラリー現の井上修策展「エアーボール」が興味深い(3月17日まで)。金属製のボールが画廊中に転がっている。なかなかきれいだ。このボールの中には大震災の半月後から採集した空気が入っているという。ビニール袋に毎日空気を詰め、それを金属ボールのなかに封じる。一緒に朝日新聞の標題とその周辺の記事も切り抜いて入れる。それらを金属ボールの中に封じている。作家のテキストから、

この作品は東日本大震災から約2週間後の2011.3.24から作り始めました。外気を2012.3.11まで毎日、新聞の切り抜きと共に、ボールの中に採取するというもので、いわば外気のタイムカプセルです。外気採取の場所は福島県南相馬市)を含む、私が生活した場所です。
作品配置は、ギャラリー中央の高いところから床の上に、353個の日付が記されたどんぐりをばら撒き、同じ日付のAIRボールと交換する方法で行いました。
アクションにもとづいたインスタレーションを通して堅固で厳格な形態の解体とシリアル(集合を構成するもと)な構造の崩壊を目指しました。

 作家の言うAIRボールには上部に日付が書かれている。これは河原温の日付絵画を思い出させる。河原も日付を描いたキャンバスを箱に入れ、箱の内側にその日の新聞を貼っていた。井上の作品とかなり共通性があるだろう。同時に違いも大きい。井上の金属ボールには強いメッセージが込められているのに、河原の日付絵画の意味はむしろニュートラルだ。ただ美術のおもしろいところは、ニュートラルなものが即マイナスではないことだ。ミニマルのジャッドのように。
 井上修策のインスタレーションはいつも多様で興味深い。
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井上修策展「エアーボール」
2012年3月12日(月)−17日(土)
11:30−19:00(土曜日は17:30まで)
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ギャラリー現
東京都中央区銀座1-10-19 銀座一ビル 3F
電話03-3561-6869
http://g-gen.main.jp/