名人芸は置き去りにされる

 もう20年ほど前、おじいさんのグラフィックデザイナーが、最近のデザイナーは烏口が使えないと嘆いていた。10年ほど前、今でも現役のグラフィックデザイナーは最近のデザイナーはロットリングが使えないと批判的な口ぶりで言っていた。そして最近のデザイナーは烏口もロットリングも使わないで、マックのイラストレーターというソフトを使ってきれいな線を引いている。
 活字の組み版工が写植の連中はいい加減な文字組をすると苦情を言っていた。写植のオペレーターはマックを使うデザイナーは大雑把な文字組だと非難する。写植の世界では0.25ミリ単位で文字を扱っていた。マックでは、この辺りとか本当に適当に文字を組んでいる。
 技術の進歩は名人芸を置き去りにする。