山本弘の作品解説(20)「過疎の村」


 山本弘「過疎の村」、油彩F20号(60.6cm×72.7cm)
 夏から晩夏にかけての頃、山本は仲間と飯田市の郊外、大平地区へスケッチ旅行にでかけた。旅行というかバスで1時間もかからない。大平地区は飯田市のある伊那谷と木曽を結ぶ峠に位置している。峠道があまり使われなくなったせいか過疎地となり不便になったとして、飯田市が住民を平地に移住させた。1軒の家を除いてすべての住民が大平地区を捨てた。そこを描きに行った。
 左から右下へ走る黒い線が山の稜線を表し、右端から折り返す黒い線が山道を示すのではないかと思っていた。山道が下端にたどり着いたあたりに線描で人が2人描かれているようだ。デュビュッフェの落書きのような人が。スケッチ旅行の仲間たちか。
 太陽が大きくぎらぎらと輝いて、湿気のない乾いた風景が拡がっている。人の気配が絶えた大平地区の印象なのだろうか。
 制作年不詳。サインの漢字「弘」から1970年代後半頃だろう。

(mmpolo所蔵)