山本弘の作品解説(34)「過疎の村」


 山本弘「過疎の村」油彩、F10号(53.0cm×45.5cm)

 1978年制作。1978年10月の飯田市中央公民館での個展で発表された。結局この個展が生前最後の個展になった。
 以前紹介した「山本弘の作品解説(20)『過疎の村』」(id:mmpolo:20090103)と同一のモチーフを扱っているが、以前紹介したのがF20号だったのに対して、これはF10号と一回り小さい。
 おそらく飯田市郊外の過疎の部落大平地区にスケッチ旅行したときのものだろう。F20号の「過疎の村」を制作年不詳としたが、山本は晩年になってから子どもの頃遊びに行った友人長沼計司の家を描いたり、鮮明な映像記憶を持っていたと思われるので、「過疎の村」のすべてを1978年制作と断定することはできない。
 右端に電柱が描かれている。大平部落はほとんど無人の地域で、それがこの乾いた風景の理由だろう。中央に描かれた円は何を意味するのだろう。いずれにしろ美しい作品だ。


山本愛子所蔵)