記憶のかたち


 お茶の水駅近くのお堀の岸に白い百合の花が咲いていた。よく知っている百合だ。何だったっけ? 「た」行の名前だった気がする。タメトモユリ(為朝百合)だったか、いや違う、タメトモユリはヤマユリよりも大きくて日本でもっとも華やかな白い百合だ。こんな路傍に咲いていることは決してない。実にみごとな豪華な花なのだ。
 「台湾」という言葉が浮かんだ。台湾なんて付く名前の百合はなかった。しばらく考えてタカサゴユリ高砂百合)だったことを思い出した。タカサゴユリは新鉄砲百合とも呼ばれ、近年あちこちで見られる帰化植物だ。栽培が簡単で種がたくさんでき、発芽率も高く各地で雑草化している。花期が短く花の形も崩れることが多く、栽培種の百合としては魅力に欠ける。
 名前を思い出したことで、なぜ台湾を連想したかも分かった。台湾には戦後中国本土から大量に中国人が移住してきたが、それ以前から住んでいた住民を高砂族と言っていた。記憶の奥の方で高砂百合の「高砂」が「台湾」を呼び起こしたのだろう。「た行」というのも間違っていなかった。
 名前を思い出すとき、私はしばしば「〜行」の言葉だと言う。以前カミさんから、その言い方、娘もおんなじねと言われた。これは私と娘に共通する癖というより、記憶のかたちが同じタイプなのではないか。


タカサゴユリの記事(2009年10月30日)
タカサゴユリ(2006年9月13日)