思想

ホンダのオートバイ開発、また可能意識という概念

だいぶ前の話だが、ヤマハのオートバイSR400が売れていた。古いタイプのオートバイでエンジンの数も1個だけの単気筒、4サイクル、排気量400ccという仕様。エンジンのマウントも直立に近い古い設計だ。今はもちろんエンジンが4つのいわゆるマルチが全盛、…

マクルーハン:メディアはメッセージ

もう何年も前になるがカナダの文明批評家マーシャル・マクルーハン(1911-1980)のメディア論が一世を風靡したことがあった。「水平思考」とか「メディアはメッセージである」とか。当時著書を読んでよく分からなかったのだが、後年広告代理店に勤めていたと…

リカオンとインパラ、残酷な死

以前NHKのテレビ番組でリカオンの狩りを見たことがあった。獲物はインパラだったか、ガゼルだったか。リカオンは小型のイヌ科の肉食動物で、集団で狩りをする。何時間も獲物を追跡し追いつめる。その時もインパラだったかガゼルだったかを追いつめ、1頭のリ…

野見山暁治の母の最後

野見山暁治「いつも今日ー私の履歴書」(日本経済新聞社)の「母の終焉」は言葉を失う。 ちょっと福岡に戻ってきてほしいと母から電話があった。(中略)福岡は霙(みぞれ)まじりの雪がちらついていた。二月のことだ。母はぼくを見るなりタクシーを拾って、…

エロスの濃度

行きつけの画廊へ行った時、先客がいて画廊主と話していた。一緒に座って客の彼女の話を聞いた。今日、娘に子供が生まれたという。孫は女の子だと実に嬉しそうに話した。 画廊を出て地下鉄に乗ると、偶然にも先に画廊から帰っていった彼女と隣り合わせた。そ…

ブータン仏教から見えるもの

今枝由郎「ブータン仏教から見た日本仏教」(NHKブックス)は、フランス留学を経てブータンで10年間仏教に関する研究生活を送った仏教学者が、日本の仏教を批判している書だ。日本の僧侶は妻帯しているが、これでは在家信者と変わらない。回忌法要を行ったり…

帰国して消息がつかめなくなった人々

曹良奎という画家がいた。港の倉庫などをモチーフに優れた絵を描いていた。1928年生まれの在日朝鮮人で、日本での差別に苦しみ北朝鮮へ渡っていった。彼の地でプロパガンダの絵を描かされているとか、最初は細々と消息が伝わってきたが、やがて一切連絡がつ…

目の前で顔がぐにゃりと曲がる経験

映画「ブレードランナー」か何かで人の顔が突然ぐにゃりと曲がってロボットになるシーンがあった。コンピュータグラフィックスで作られた映像だ。あれと同じ体験を現実に二度経験したことがあった。 一度は夜向こうから歩いてくる女性が美人に見えたのに実際…

河合雅雄が語るインセストタブー

以前もインセストタブーについて書いたが、もう一度河合雅雄を正確に引用して紹介したい。 河合雅雄「子どもと自然」(岩波新書)より (前略)レヴィ・ストロースは「動物にはインセストを禁止する何の規則もなく、ここにおいてのみ、自然から文化、動物か…

他者は理解できるのか

理解できることと、何だか理解できること、そして理解できないことがある。 生理になるとお腹が張るのと言った女性に、それってどんな感じ? と聞くと、お腹が一杯になったときと一緒よと言われて何だか分かった気がした。 私は空腹になると手足が震え出し、…

思考が枠づけられている

絵本を見ていた。タイトルは忘れたが、ウサギを飼う話だ。金網で地面を囲いその中に番いのウサギを放す。ウサギは地面に穴を掘りその穴の中で子ウサギを出産する。やがて穴の中で大きくなった子ウサギたちが親に連れられて穴の外へ出てくる。穴の中の子ウサ…

作間敏宏展が導くもの

12月に銀座のギャラリー巷房とSpace Kobo & Tomoで行われた作間敏宏個展「接着/交換」に関して私も一度報告したが(id:mmpolo:20061228)、このたび作家がその展示のパンフレットを作り送ってくれた。 そこに東京国立近代美術館の大谷省吾さんから作家への公…

この言葉を言ったのは誰だろう?

昔読んだ次の言葉の作者を知りたい。ドイツ人だと思ったが。 ナチズムがなかったら諸君は平和な市民生活を過ごしただろう。しかし、諸君がいなかったらナチズムは決して勝利を収めなかったであろう。

突然なぜ思い出したのか

道を歩いていて急に手紙を持ち歩いているのを思い出した。何かポストのイメージが浮かんだ。この辺りにポストがあるような気がして探すと歩いてきたビルの陰にあるのを見つけた。手紙を投函して考えた。なぜ今急に手紙のことを思い出したのか。 以前からこの…

人の身体の境界はどこか

以前会社の同僚から、私のワイシャツのポケットに手を入れられて、とても不愉快だったことがある。彼は私のタバコを取っただけだったが。タバコの箱を抜き出して1本取り出し、箱を私のポケットに返す。それも黙ってする。社長に対しても同じことをしていた…

鷲田清一:「きたない」または〈私〉の境界

鷲田清一の講演録で「ファッションという装置」(河合ブックレット)がある。 そこで鷲田は、レインを引用して「きたない」という感情について次のように紹介している。 「レインは、ぼくたちが何かを飲むときには4通りのケースがあると言います。」 1. ま…

仲正昌樹「集中講義!日本の現代思想」(NHKブックス)がすごい

まず目次から示すと、 序 かつて、「現代思想」というものがあった Ⅰ 空回りしたマルクス主義 第一講 現実離れの戦後マルクス主義 第二講 大衆社会のサヨク思想 Ⅱ 生産から消費へーー「現代思想」の背景 第三講 ポストモダンの社会的条件 第四講 近代知の限…

茂木健一郎

茂木健一郎「脳と仮想」(新潮社)を読む。 クオリア(質感)と仮想という言葉以外、やさしい日常語で新しい認識論を語っている。フッサールやメルロ=ポンティを楽々と乗り越えて。 天文学が哲学の宇宙論に取って代わったように、認知科学が認識論に代わり…

丸山真男と吉川幸次郎、その他

丸山真男が「日本政治思想史研究」を発表した時、吉川幸次郎はそれを評して「お素人さんとしてはなかなか」と言ったという。 司馬遼太郎の歴史小説に対して、加藤周一は英雄史観だと批判した。 本居宣長論を書いた小林秀雄に「私には分かりませんでした」と…