目の前で顔がぐにゃりと曲がる経験

 映画「ブレードランナー」か何かで人の顔が突然ぐにゃりと曲がってロボットになるシーンがあった。コンピュータグラフィックスで作られた映像だ。あれと同じ体験を現実に二度経験したことがあった。
 一度は夜向こうから歩いてくる女性が美人に見えたのに実際はそうでもなくて、それが分かったとき美人だった顔がぐにゃりと曲がって現実の目の前の顔になった。本当にぐにゃりと変わったのだ。この「ぐにゃり」とは瞬間に変化するのではなく、0.5秒未満で痕跡をつけながら変化するといった感じなのだ。
 もう一度はやはり暗かった気がする。向こうから近づいてくる女性がA子だと思ったらB子だった。その時A子の顔がぐにゃりと曲がってB子になった。
 はっきりとは分からないのに、A子だと思う。この時不十分なデータからA子だと断定し、A子のイメージを作り上げている。われわれはこれを普通に行っている。犬がいたかと思えばバケツだったり、人かと思えばヒマワリだったり。これはイメージを構成しているのだ。
 何が言いたいのかと言うと、認識について考える手がかりになるのではないかと思っているのだ。