詩人吉田加南子とそれから連想することども

mmpolo2007-04-13




 友人の版画家今村由男君の個展で詩人の吉田加南子を紹介された。学習院大学仏文科の教授。お父さんも詩人で「ガダルカナル戦詩集」の著者である吉田嘉七。この詩集のタイトルはややこしくて、井上光晴にも同名の小説がある。井上の小説は吉田嘉七の詩集をもとに書かれ、そのためか同じ題名を採用している。
 吉田加南子は一時期「現代詩手帖」の「新人の作品」という投稿欄の選者をしていたことがあり、その時私の作品を採ってくれた。
 彼女から「現代詩手帖」に入選した人たちが定期的に集まっているから参加しないかと誘われ、学習院大学に初めて行った。あいにく集会は休みだった。学習院大学で連想するのは大島渚の映画「日本春歌考」だ。たしかここでロケをしていた。映画の中で歌われていた歌をまだ覚えている(後述)。
 吉田加南子は今村由男を高く評価していて、いっしょに詩画集を作る計画があると聞いた。今村君とは同郷で、小学校と中学がいっしょだった。彼の銅版画作品を見ると、同郷の風景、村の土蔵の陰の草の生い茂った湿った空間の色を思い出す。生まれ育った土地の色か。(右上が今村の作品)


 (「日本春歌考」で歌われた朝鮮人娼婦の歌)

雨のしょぽしょぽ降るぱんに/カラスのまとからのそいてる/まてつのきぽたんのぱかやろう
あかるの帰るのとうしゅるの/早く精神ちめなさい/ちめたらけたもてあかんなしゃい
お客さんこのころ紙高い/ちょうぱの手前もあるてしょう/こちせんしゅうきをはじみなさい
そしたら私はたいて寝て/ふたちもみっちもおまけして/かしわの鳴くまてぽぽしゅるわ


雨のしょぼしょぼ降る晩に/ガラスの窓から覗いてる/満鉄の金ボタンの馬鹿野郎
上がるの帰るのどうするの/早く精神決めなさい/決めたら下駄持って上がんなさい
お客さんこの頃紙高い/帳場の手前もあるでしょう/五十銭祝儀をはずみなさい
そしたら私は抱いて寝て/二つも三つもおまけして/かしわの鳴くまでぼぼするわ


(注)
満鉄の金ボタン=満州鉄道のお役人
かしわの鳴くまでぼぼするわ=鶏の鳴く朝までエッチするわ