「方丈記」が面白い?

 娘が「方丈記」を繰り返し読んでいる。あんなものが面白いのかと思っていた。それが最近発行された丸谷才一の「文学のレッスン」を読んでいたら、すごいものだと書かれていた。

……「方丈記」はすごいものなんですよ。昔、うちの息子が大学受験のとき、古文が苦手だから何かいっしょに読んでくれと僕にいったの。それで大野晋さんに相談して、「徒然草」でも読もうかと思っていますといったら、大野さんは、「徒然草」はつまらないからおよしなさい、何といってもいいのは「方丈記」だ、といってすすめてくれた。それで読んだ。おもしろかった。その話をドナルド・キーンにしたら、キーンさんはコロンビア大学で「方丈記」を教えたことがあるんだって。そのとき学生の一人から手紙がきて、ああいうすごいものを読み、日本語を勉強して本当によかったと思った、と書いてあったというんですね。確かにそうかもしれないなと思いました。あれはやはり文章がいいもの。

「文学のレッスン」は丸谷才一湯川豊がインタビューしたもの。2007年から2009年にかけて8回話をし、それを雑誌「考える人」に連載して今回単行本にまとめた。テーマはそれぞれ「短篇小説」「長篇小説」「伝記・自伝」「歴史」「批評」「エッセイ」「戯曲」「詩」となっている。
 丸谷は吉田健一の「文学概論」を気に入っていて、湯川を相手にそれをジャンル別に論じることを試みた。この試みはとても成功している。読んでいて本当におもしろかった。

文学のレッスン

文学のレッスン

方丈記―付現代語訳 (角川ソフィア文庫 (SP34))

方丈記―付現代語訳 (角川ソフィア文庫 (SP34))