今日10月27日は久保田活司の20年目の祥月命日だ。活司は１歳下の高校の後輩。貧乏しながら小説を書いていた。小説現代の新人賞に応募していたが一度も入選しなかった。
文体が確立していたので、お前は大丈夫だよと言ったが、駄目だった。いわゆる戯作体の文体だった。
活司の葉書から。
年賀状ありがとう、皆様元気だね。長男A司、今年は中学で、６年間学業全くふるわなかったけれども、体育と図工のみ異常な才能を発揮し、水泳は常に学年代表で飯田下伊那敵に回し、絵画は県展入賞度々、けれども寝小便はいまだ治らず、二男H生はやはり本年小学校これはどういう風の吹き回しか、久保田家始まって以来のぶりっ子天才児、左効きながらひらかなカタカナ漢字英会話数学などもかなりものし、じじいばばあの期待の玉、兄は、破産したけれども悔いなきフルートを持たせ、弟には100万のレコーダー、音楽一家にするつもりで、今日も下条の現場で穴を掘る土方のなりわい、はや４か月。（引用以上）
私の会社に電話してきて、肝臓癌になったからあと３か月の命だ、会いに来てほしいと言われた。いつもオーバーなことを言うのでまたかと思ってほっておいた。
３か月しない内に活司の友達から電話があり、今朝死にました。36歳だった。
活司に教わったことはカツアゲと本の万引きだった。二人でした。カツアゲは高円寺のガード下だった。一銭も取れなかった。
乱暴者で、夫婦げんかをして奥さんに重症を負わせたり、酒に溺れたり、線路に座り込んで一緒に電車を止めたり、思い出せばろくなことをしなかった。
俺は妾の子だ。小説を書いて回りの連中を見返してやると言っていた。結局回りの連中は乱暴者の酒飲みで半端なヤツとしか覚えていないだろう。私にとってはそうではない。
金の無心の手紙が残っている。俺たちは貧乏だったね。たぶんお金は貸せなかったのではないだろうか。
