山本弘遺作展の展評(6)

mmpolo2006-10-28




「無頼画家・山本弘の死に急ぐ絵筆」by匿名


最初は16歳だった。以来、自殺を図ること6度。ベルトで首をくくり、猫イラズを飲み、ダムに飛び込む。青酸カリまで使った。しかしその度に生還。友人たちに「狂言」といわれると、その場で太股にナイフを突き立てた。
長野県の飯田をほとんどはなれることなく、中央の画壇に知られることなく無頼の生をつらぬいた画家・山本弘('30〜'81)の遺作展である。36歳で結婚するが、生活は変わらず酒びたりの日々。吐血、脳血栓の末、手足も不自由に。右の自画像(写真)はそのころ描いたもの。だが制作意欲は衰えず、画風も変わった。それまでの暗鬱なリアリズムからここに挙げたような色の美しい抽象へ(10月18日の画像)。「やる事なす事失敗だが、ゑだけはそうでありたくない」。しかし結局、最後は自宅で首を吊って死ぬ。画家にとってはすべてが「失敗」だったのか。
(「芸術新潮」1994年9月号)