私の最も尊敬する画家N先生からいただいた手紙。
みゆき画廊から作品写真を預かって、私の手元に置いてから、もう大分たちました。
大兄の山本弘を思う気持ちは、たいへんに嬉しく思います。ひとりの人間の描いたものが、ただの一人でもいい、このように、心の中に食いこんでいったということが、嬉しいのです。
若くして亡くなられたのは残念なことでした。どうしてかというと、人間五十を過ぎると、かなり落着いて、あたりを見回せるものではないかと思います。
山本弘という方は、かなりの才能があった。ただ少し、せっかちすぎた。感覚で押しまくって、押しまくって頓挫されたような気が致します。
たしかに、言われるように、どこか私の仕事と一脈通じたところがある。ものへの受けとめ方が似ているのかもしれません。
感覚をもっと抑えて、もっと落着いて、ものを見据えられたら良かったのにと、その年齢に近ずいてからの他界は、やはり惜しまれます。
二、三日うちに、銀座でも出る折り、写真は、みゆき画廊に持っていっておきますので、ついでのことにお受け取りください。
(無許可で掲載しています。N先生ごめんなさい)