若桑みどり『絵画を読む』(ちくま学芸文庫)を読む。副題が「イコノロジー入門」、「イコノロジー」とは図像解釈学。11月に読んだ若桑みどり『イメージを読む』の姉妹書。若桑によれば、『イメージを読む』は初級用の、『絵画を読む』は中級用の啓蒙書とのことである。本書はもともと1992年NHK教育テレビの「人間大学」で全12回6時間に渡って放映されたテクストを改訂したもの。NHKブックスの1冊として1993年に発行された。私も当時NHKブックスを購入して読んでいる。今回それを書棚に探したが手放してしまったようだった。
本書で取り上げた絵画は、カラバヴァッジョ「果物籠」、ティツィアーノ「聖なる愛と俗なる愛」、ボッティチェッリ「春」、ニコラ・プサン「われアルカディアにもあり」、ミケランジェロ「ドーニ家の聖家族」、フラ・アンジェリコ「受胎告知」、レンブラント「ペテロの否認」、ブロンズィーノ「愛のアレゴリー」、ジョルジョーネ「テンペスタ(嵐)」、デューラー「メランコリアⅠ」、バルドゥング・グリーン「女の三世代」、ピーテル・ブリューゲル「バベルの塔」の12作品。
ヨーロッパ絵画は、写実主義以前はみなこのように複雑な意味を持っていたのかと驚かされる。若桑は一見隠された意味をつぎつぎと読み解いていく。それは正に驚くべきことばかりだ。
極論すれば、美術愛好家にとって本書は必読書と言って良いとまで思う。特に日本人は絵画をキリスト教やプラトン主義などの文化を捨象して絵画を感性だけで見ているきらいがある。もちろん私もそうだった。日本人の好きな印象派は風景をそのまま描く傾向にあり、絵画をそのようなものと捉えてきたと思う。目から鱗が落ちるのは確実だ。