東京両国のアートトレースギャラリーで「カナタのてざわり」展が開かれている(11月3日まで)。参加作家は、コヤマイッセー、橋本佐枝子、長谷川美祈、馬見塚喜康の4人。
コヤマは1980年東京墨田区生まれ、2004年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業している。2013年に画廊るたんで初個展、以来ギャラリー219やJINENギャラリーなどで個展を行っている。今回はペン画を発表している。子ども時代を過ごした墨田区の空き地の遊び場の光景を細密なペン画で描いている。
橋本は1983年兵庫県生まれ、慶應義塾大学文学部心理学専攻を卒業した後、2010年明治学院大学大学院臨床心理学研究科博士課程前期を修了している。作家としては特異な履歴だ。様々なグループ展に参加した後、2019年南青山で初個展。橋本は児童養護施設で働いている。そこで暮らす子供たちの中には、自分には家がないと思っていて孤独を感じている子がいる。でも一歩外へ出れば、自分と同じ人と出会えるかもしれないよ、と伝えたくてこの作品を作ったという。最初に見たとき、レゴを並べているのかと思ったが、近づいてみると型抜きした「白いくま」を無数に並べているのだった。「人と同じ」「人とは違う」とはそもそもどういうことなのか、と橋本は問う。橋本のテキストから、
同じ白色はないし、同じくまはいない。/他社との差異と共通点、集団に守られる安心感と埋没することへの不安。「白色」のくまと「いえ」で表現した。
馬見塚は1984年愛知県生まれ、2010年に愛知芸術大学大学院美術研究科油画・版画領域を修了している。個展は2013年と2015年~2019年に愛知県を中心に京都府、三重県で開催している。今回はコロナで自粛していた期間に見た様々な窓を油彩で描いている。
長谷川は1973年福岡県生まれ、昭和女子大学生活環境学科を卒業し数年間設計士として勤務した後、写真家として活動を始めた。2015年よりアメリカ、イギリス、アテネ、中国、東京などで展示をしている。長谷川は2018年6月に義母を亡くした。「後悔ばかり浮かぶ」と書く。悲嘆にくれる家族の写真を撮っているという。
照明の関係で、馬見塚と長谷川の展示が見づらかった。そのあたりもっと気を使っても良いのではないか。
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「カナタのてざわり」展
2020年10月23日(金)-11月3日(火)
12:00-19:00(休廊なし)
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アートトレースギャラリー
東京都墨田区緑2-13-19 秋山ビル1F
電話050-8004-6019
http://www.gallery.arttrace.org
※墨田区立緑小学校前