今月、レイ・ブラッドベリ「火星年代記〔新版〕」がハヤカワ文庫から発行されてそれを読んだ。〔新版〕と表示されているのは、巻末の解説によると、1997年に原著を米国エイヴォン社から発行し直した際、
旧版では「1999年1月 ロケットの夏」とあった年代が「2030年1月 ロケットの夏」に変えられ、以後、すべての年号が31年ずつ更新されたのである。
その旧版が小笠原豊樹訳でハヤカワ・SF・シリーズで出たのが1963年4月だという。その後1976年3月にハヤカワ文庫NVに収録されている。SFとしてはすでに古典だ。私はこの旧版の文庫を読んでいるが、初めてこれを読んだのは昭和40年頃だったと思う。世の中にこんなに面白い小説があるのかと感激した。これも〔新版〕の解説によると、最相葉月「星新一 1001話をつくった人」からの孫引きで星新一の日記を紹介している。
そしてまもなく、運命的な出会いがやってくる。
"1月23日 ハレ カゼヒイテウチニネテイル 火星人記録ヨム コンナ面白いのはめったにない"
前年(1956年)10月に元々社から斎藤静江訳で刊行された最新科学小説全集の第10巻、レイ・ブラッドベリの「火星人記録」(現「火星年代記」)だった。この時期の日記で親一が題名をあげて感想を書き込んでいるのは、映画も含めてこの作品だけである。
昭和40年頃に私が読んだのもこの「火星人記録」だった。このシリーズは、ほかにフレドリック・ブラウンの「発狂した宇宙」、ロバート・シェクリーの「人間の手がまだ触れない」、ハインラインの「人形つかい」。ヴァン・ヴォークトの「新人類スラン」などだった。古いことを憶えているのは当時の感激の大きさなのだろう。
さて、今回「火星年代記〔新版〕」を読み直しての感想は、つまらないというものだった。原著の出版が1946年なのだ。歴史の浅いSFにとって、60年前というのはあまりに古いのだろう。そしてSFは進化しているのだろう。あれからずっと面白いSFがたくさん書かれたのだ。残念ながら、ブラッドベリの時代は終わっていた。
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