スタニスワフ・レムが参照したレイ・ブラッドベリ

 スタニスワフ・レムソラリス」は、惑星ソラリスの知性が、調査に訪れた人間の無意識を探って、隠されていた記憶から恋人や赤ん坊のリアルな像をを作り出すSFだ。原作は1961年に発行された。
 レイ・ブラッドベリ火星年代記」(ハヤカワ文庫)の原作は1946年。この連作短篇中の「2000年4月 第三探検隊」では、火星に降り立った隊員すべての前に亡くなった懐かしい家族たちが現れる。

(前略)ひょっとして火星人たちは、この町の材料を、おれの記憶からだけ取り出したのではなかろうか。子供の頃の記憶はいちばんはっきりしているという。おれの心から町を一つ作っておいて、あとはロケットの乗組員たちの心から親しい人たちを作り出し、それをこの町に住まわせたのではなかろうか!

 ブラッドベリの作品はレムの作品より15年早い。すると、レムがブラッドベリを参照した可能性は十分あるだろう。「ソラリス」はもっと深いもっと大きな物語になっているけれど。
 スタニスワフ・レムと筒井俊隆(筒井康隆の弟)との影響関係については以前触れた。
「スタニスワフ・レム」(2006年4月5日)

ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)

ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)

火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)

火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)