洲之内徹は「芸術新潮」に長年連載していた「気まぐれ美術館」の著者で、一方東京銀座の真ん中に「現代画廊」を持っていた。「気まぐれ美術館」は洒脱な文章で綴られ、主題は多く絵のことだったが、晩年は自分の不倫のことや年老いてから作った息子のことなど、好き放題に書いていた。
さて、その洲之内の審美眼は本当はどうだったのだろうとこの頃考えている。結論から言ってしまえば世間の思惑と違って大したことはなかったのではないか。「気まぐれ美術館」で取り上げられている画家は、佐藤哲三、長谷川利行、吉岡憲、田畑あきら子、松田正平、喜多村知など、優れた画家ではあるものの、時代を代表する画家ではなかった。同時代に、山口長男、村井正誠、猪熊弦一郎、中西夏之、菅井汲、高松次郎等々がいたにも関わらず。
宮城県立美術館には洲之内徹コレクションが収蔵されている。しかし、身近なコレクターで言えば、笹木繁男さんのコレクション「あるサラリーマン・コレクションの軌跡〜戦後日本美術の現場〜」の方が目配りが行き届いているのではないか。2003年から2004年にかけて、この名前で周南市美術博物館、三鷹市美術ギャラリー、福井県立美術館で巡回展示されたがとても良い美術展だった。
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