歓迎会で伝統の踊りを見せてくれた女子生徒たち

 文化人類学者の西江雅之が「図書」2010年5月号に「トロブリアンド島を訪ねる−−パプアニューギニアへの旅」を書いている。西江パプアニューギニアのトロブリアンド諸島を訪ねる。

 トロブリアンド諸島。ポートモレスビーパプアニューギニアの首都)から直線距離で約450キロ。島の中心地ロスイアの空港にプロペラ機で降り立つ。空港とは言え、滑走路の脇には普段は無人の小屋が一つあるだけだ。乗客たちを迎えるために集まった島の人々は、どこかポリネシア人を思わせる。本島の高地地方の人びとと比べると、肌の色が明るく顔立ちは柔らかい。十数人の乗客と島民の間で、英語とキリヴィラ語(キリウィナ語、ボヨワ語ともいう)が飛び交う。
(中略)
 荷物を部屋に置き、早速、近所の村を訪ねることにする。1年ぶりで大酋長に会うためである。土産に持参した塩や砂糖、缶詰、タバコの類を渡して、挨拶をすませる。
(中略)
 村の広場にもなっている庭の周囲には、大酋長の妻たちの小屋が並んでいる。多数の妻を持っていた先代の大酋長とは異なって、現在の大酋長の妻は4人きりである。「少ないけれど、今後、増やせばいい」などと、周りの者が言う。
(中略)
 到着の翌日、本島から仕事に来たお偉方たちのための歓迎会が学校で用意され、わたしもその場に同行することになった。1階建ての小さな校舎の前の庭で、校長の指揮の下、伝統的な踊りが披露された。見事な体格の女子生徒たちが、膝上の短い腰蓑一つ付けただけの裸の姿で活発な踊りを見せてくれた。その伝統は近いうちに「好ましくない」と批判され、姿を消す運命にあるのだろう。

歓迎会で伝統の踊りを見せてくれた女子生徒たち

 いや、これを未開だなどと批判してはいけない。風俗なんて相対的なものにすぎない。下記に紹介したように、日本でも先の大戦中は女学生たちが上半身裸で乾布摩擦をしていて、それが好ましいことと雑誌に写真で紹介もされていたのだ。


エロスは文化に規定されている(2009年9月1日)