伊那谷が深くて広い巨大な谷であること

 一昨日、JR東海リニア新幹線南アルプスをほぼ直線に貫くルートで建設する方針を固めたとのニュースを紹介した。南アルプスを抜けて伊那谷を横断するルートだ。この天竜川が作った伊那谷については知られていないことが多い。伊那谷出身の本多勝一のエッセイ「伊那山脈の最高峰・鬼面山に登る」(「稲穂」第5号)より。

 伊那谷出身の皆さんにぜひ認識していただきたいことがある。(中略)
 それは、伊那谷が日本列島全体で最も巨大な谷であるということ。単純な話だが、これが案外みすごされている。「巨大な谷」ということは、深くて広いということであり、それはつまり両側が日本で一番高いということにもなる。
 そう。伊那谷の両側にそびえ立つ二つの山脈ーー赤石山脈(俗称「南アルプス」)と木曽山脈(俗称「中央アルプス」)ーーは、いずれも標高3000メートル前後であって、そんな谷は伊那谷以外の日本のどこにもない。

 本多勝一が「伊那谷出身の皆さん」と呼びかけているのは、この雑誌が在京飯田高校同窓会誌だからだ。
 私も以前同じテーマについて、少し違うニュアンスで教えられていた。それは伊那谷が極めて広い谷だということ。ふつう谷は狭いものだ。こんなに広い谷はアフリカに行かないとないという。真偽のほどは知らないが、これを教えてくれたのは神奈川の人で、放送大学で「地理」を受講してこのことを知ったという。
 その人竹村芳樹さんは山本弘の絵具の研究をしたいと言って、未亡人を訪ねられた。その結果「画家・山本弘の使用した油彩絵具に関する調査報告」を1997年に作成された。伊那谷が広いことを教えられたのは、飯田市へ行く中央高速バスの中だった。初めて訪ねた伊那谷の広さに感嘆されていた。