「ずら」の語源は

 ある美術のメーリングリストで、『銭ゲバ』を見ていたというOさんが「ずら」はどこの方言かと質問した。
 それに対して山梨のYさんが回答した。

 Oさん、ずらって、山梨県の方言だと思います。・・・たぶん。
 そーずら、とか使いますから。

 その回答を読んでOさんが再度書き込んだ。

 山梨県で、「〜ずら。」って使うんですね。いいなぁ〜! Oちゃん感激!!
 Yさん、ありがとう☆!(^^)!では、さっそく。↓

 ホットケーキマン「Oちゃん、『銭ゲバ』見てるんだって?」
 Oちゃん「そーずら。」

「ずら」は長野県南部の伊那谷でも使用されている。で、言うのだがこの使い方は正確ではない。そもそも伊那谷は古い平安時代の言葉使いが残っている。カミさんの恩師新山茂樹さんがゼミでそう言っていたと、昔付き合い始めた頃のカミさんが教えてくれた。伊那谷は古い言葉の宝庫らしい。そのことは以前「昆虫食」で触れたことがある。一般に都からの距離と古い習俗の残存は強い関連がある。都に遠いところほど古い言葉が残っている。伊那谷は都からさほど遠いわけではなかったが、交通の辺鄙さから実質的な辺境であったのだろう。
「ずら」の元は「つらむ」なのだ。推量の助動詞なのだ。自分のことをこの場合「そうずら」=「そうでしょう」とは言わないだろう。断定ならこの場合「そうだに」と言う。「なり」が「なむ」「なん」「に」に変化したのだ。
 ついでに、南信(長野県南部)では「行こう」は「行かず」だ。「行かつらむ」の変化なのだ。昔漫才の青空一夜が「行くや行かずの何とかの峠」と言っていた。何とかとは長野県と山梨県の県境で、ここを境に「行かず」が「行く」の意味と「行かない」の意味に分かれるらしい。青空一夜はその県境の長野県側の出身だった。