ハインライン「悪徳なんかこわくない」はTSの世界だ

悪徳なんかこわくない 上 (ハヤカワ文庫 SF ハ 1-6)

悪徳なんかこわくない 上 (ハヤカワ文庫 SF ハ 1-6)

悪徳なんかこわくない 下 (ハヤカワ文庫 SF ハ 1-7)

悪徳なんかこわくない 下 (ハヤカワ文庫 SF ハ 1-7)

 ハインライン「悪徳なんかこわくない」(ハヤカワ文庫)をようやく読んだ。娘が同じ著者の「夏への扉」を読んで気に入ったので読んでみたら、これが気持ち悪くて途中で投げ出した。父さん、読んで感想を聞かせてと言う。
「悪徳なんか〜」はスパゲッティ状態になった億万長者の老人が、脳移植で若い女性の体を得るSF。ところが死んだはずの若い女性の意識がその肉体に残っていて、老人と娘が頭の中で会話をしながら話が進む。二人も回りの人たちも性的にはほとんどフリーセックス状態。二人の間に全く葛藤がない。
 上下2巻からなるこの小説を、読み始めは設定が奇抜でそこそこ楽しめたものの、老人の男と若い女性が1人の頭の中で同居しながら、全く葛藤がないというものすごくご都合主義な設定に不愉快になってきた。もしかしたら最後にどんでん返しが待っているのだろうかと読み進めたが、最初から最後までみんなが仲良くやっているのだ。
 これは何だろう。娘がトランスセクシュアルの人たちのバイブルらしいよと言う。トランスセクシュアル(TS)は、Wikipediaによれば、

性転換症(せいてんかんしょう、英:Transsexualism)とは、性同一性障害のうち、特に身体的性別に対する違和感・嫌悪感が強く性別適合手術までを望む症例を指す。

 なるほど、それで分かった。そういう趣味の人たちに支持されている小説と考えれば納得がいく。まさにそのような趣味を肯定する内容だ。ハインラインがそうした世界の人だったのだろう。ノンケには気色悪い作品であるのは当然だった。