インセストタブー再び

 ピグミーチンパンジーとも呼ばれるボノボはとても淫乱だという。ヨーロッパ社会へ初めてチンパンジーが紹介されたとき、動物学者に反対してヨーロッパ人はチンパンジーとヒトを同属に分類するのを拒否した。それはチンパンジーが当時考えられないくらい淫乱な動物に見えたからだという。ところがボノボと比較するとそのチンパンジーが高潔にに見える。それほどボノボは日常的に交尾を繰り返す。挨拶代わりに交尾し、喧嘩をしては仲直りに交尾をする。雌同士でも普通に性器をこすり合わせる。
 そんなボノボの中でも研究者たちがニンフォマニアとあだ名をつけた雌がいた。どんな雄の求愛も拒否しなかった。ただ1頭弟を除いて。ボノボインセストタブー。
 人間も普通インセストタブーは犯さない。親子や兄弟で交わることはない。それを制度として説明することが多い。制度は人工だ、人が作ったものだ。
 インセストタブーが生じる理由を、一緒に育つことによるという意見がある。一緒に育つと男女・雌雄の関係が生じないのだという。この方が説得力があるのではないか。
 先のボノボニンフォマニアの弟の例はそれに反するが、とかく雄・男は極端にスケベな個体がいるし、姉の方はきちんと拒絶している。平安時代の貴族たちや天皇家には異母兄妹間や叔父姪間での婚姻があったが、これは一緒に育っていないせいではないか。
 インセストタブーは人工の制度ではなく、ある種の本能と考えた方が良いように思われる。

 さて、では婚姻の構造(交差従兄弟婚など)はどうなるのか。意識的に作った制度ではないから構造と呼ばれる。