ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』を読む

 ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』(講談社文庫)を読む。知らない作家だった。1936年にアメリカのアラスカで生まれ、鉱山技師の父親に従ってアメリカの鉱山街を転々とした。戦争中はテキサスの母の実家に住んだが、祖父は酒浸りの歯科医だった。終戦後父母と妹とともにチリで過ごした。母の実家の貧民街から一転してお屋敷に召使つきの暮らしに変わった。3人の夫と結婚し3回の離婚をした。学校教師、掃除婦、電話交換手、ERの看護助手をしながら、シングルマザーとして4人の息子を育てた。子供の頃に患った脊椎湾曲症の後遺症から肺疾患の悪化に苦しめられた。2004年にガンのため68歳の誕生日に死去した。生涯に76の短篇を書いた。

 アメリカでベルリンの短篇集を編集したリディア・デイヴィスの紹介によれば、

 ルシア・ベルリン作品の多くは彼女の実人生に基づいている。彼女の死後、息子の一人はこう語っている――「母は本当にあったことを書いた。完全に事実ではないにせよ、当たらずといえども遠からずだった」。

 でも、日本の私小説とは違っている。どこか冷めている感がある。そしてリディア・デイヴィスも訳者の岸本佐知子もベルリンの文体を絶賛している。ただ訳文だけからはそこまでは分からない。

 ただ、本書を読んで自分でも書いてみたいという気持ちが湧いた。

 ニューヨーク・タイムズ紙が選んだ「21世紀の100冊」に本書がランクインされているという。