東京京橋のギャラリー椿で夏目麻麦展を見る(4月6日まで)。夏目は1971年生まれ、1998年に多摩美術大学大学院を修了している。その年にギャラリーQで初個展、以後ベルギーや東京の西瓜糖、藍画廊、Porte de Paris、ギャラリー椿などで個展を行っている。現在、中堅作家としてトップクラスの実力を持っている。
ここに掲載した50号の作品2点が特に良かった。DM葉書にも使われた斜め後ろ姿の女性像、これは裸婦だろうか、色彩が艶めかしい。いつも夏目の描く人物は形態があいまいだが、光に包まれて不思議と官能的なのだ。
もう1点、右腕にあごを乗せている作品。女性が物思いに耽っている。顔は暗く表情は見えない。しかし失望とか激しい悲哀に陥っているのではなさそうだ。その顔から胸、腹部にかけての暗い色を、洋服からソファ、そして後ろの空間と徐々に明るくなる色彩が、層をなして包んでいる。とても美しい作品だ。
夏目は、叫んだり、けれん味たっぷりだったり、派手だったりすることなく、一見淡々と画面を作っているように見える。人物のポーズも動きは少なく、特別な行為をしているものはない。それがなぜこのように魅力的なのだろうか。
2007年より2年に1度、奇数年にギャラリー椿で個展が開かれている。ここに夏目の深化を追いかける楽しみがある。
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夏目麻麦展
2013年3月22日(金)−4月6日(土)
11:00−18:30(日曜休廊)
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ギャラリー椿
東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F
電話03-3281-7808
http://www.gallery-tsubaki.jp