アートの変容

 資生堂主催の「第7回shiseido art egg(シセイドウ アートエッグ)展」が開かれている(3月28日まで)。これは「発表の場を求める新進アーティストの皆さんに、ギャラリーの門戸を広く開く公募制のプログラムです」というもの。

第7回となる本年度は、全国各地より293件の応募をいただきました。その中から久門剛史、ジョミ・キム、川村麻純の3名が入選し、資生堂ギャラリーでそれぞれ個展を開催します。ぜひ3つの個展をご高覧いただき、次代を担う世代の芸術活動を一緒に応援してください。

 そして、久門(1.8ー1.31)、ジョミ(2.5ー2.28)、川村(3.5ー3.38)という日程で個展が開催されている。
 久門はギャラリー内に家とオフィスの2つの空間を作り、「それぞれの空間でゴミ箱が光ったり、少女のつぶやく声が聞こえたりと、様々な出来事を起こします。一定の間隔で繰り返される出来事を通して、繰り返す毎日の些細な変化に気づき、向き合うことを促します」とある。ギャラリーに作られた家の縁側らしい場所に座ってしばらくスピーカーから流れてくる音を聞いていたが、これはつまらなかった。企画は面白そうなのに、それが全く実現できていないと思った。
 次にキムは、「身の回りにある日用品を素材に用いるアーティストです。徐々に小さくなり、やがて消えていく消臭ビーズ製のネックレス、マスキングテープで作った、これまでに住んだ家々のミニチュア、空気が抜けるにつれ、だんだん下に落ちていくヘリウムガスの風船、髪の毛を編み込んだ櫛……。キムは取るに足らない日用品が時間とともに緩やかに変化していく様を慈しみます。ささやかな日常の痕跡に潜む、つかの間の美しさが浮びあがります」と解説されている。マスキングテープで作った家の模型は面白くなかったし、「やがて消えていく消臭ビーズ製のネックレス」は、昇華するナフタレンが徐々に消えていく立体の作家宮永愛子を思い出す。
 川村は母と娘をテーマにした映像作品を展示している。向かい合う2つのスクリーンに母と娘が映写され、娘が母親について語っている。これは昨年のINAXギャラリー(もうLIXILギャラリーに変わっていたか?)で見たものだ。久門、キム、川村の3人の中では最も完成度が高かった。
 さて、彼らが次世代を担う新進アーティストと言われると、一抹の違和感が残ることを否めない。インスタレーションと中途半端なコンセプチュアル・アートと映像作品が並べられている。まさか平面作品はVOCA展に任せた、などと言うのではあるまい。せめて1点くらいは造形的作品が選ばれていてもよかったのではないか。と、ちょっと綾をつけてみたのだった。