会わせたい人がいる

 高校の同級生から電話があり、「会わせたい人がいるから新宿へ来ないか」と言う。残業をほっぽり出して、誰に会わせてくれるんだろうとわくわくしながら出かけていった。ルミネの喫茶店にいたのは友人と彼の勤める企業グループの生命保険の勧誘員の女性だった。当然生命保険への加入を勧められた。
 私は紳士なのでその場では友好的に振る舞ったが、喫茶店の代金は割り勘にしたし、お腹が空いていたが一緒にメシを食べようとは決して言わなかった。仮にそのような提案があっても絶対に賛同しなかっただろう。
 友人は私に何といって電話をするべきだったのか。「会ってほしい人がいる」に決まっている。この場合「〜ほしい」と謙(へりくだ)らなければいけないのだ。私は紳士だけれども狷介でもあるので、以後彼のことを許さず今日まできている。