山本弘の作品解説(8)「削道A」

 山本弘「削道A」油彩、F20号(72.7cmX60.5cm)
 生前最後の1978年10月の飯田市中央公民館の個展で発表された。題名のAは同じ題名の作品があったため、山本がAとBとした。削道の意味は何だろう。山を削って新しく作った道のことだろうか。左下の不定形は以前紹介した「銀杏」の左下にも同じような形があったことを思い出す。この形の色が斜めに不連続に右上に続いている。これが道なのだろうか。
 強烈な色彩は山本の特長のひとつだ。ほしい作品だが、元カミさんに言わせれば、あんた赤ければ何でもいいんでしょ。どういう意味だ。
 昨日のエントリーで題名はモチーフだから無駄ではないと書いたが、それは山本弘に関してであって、普遍的なものではない。野見山暁治の題名は「信じられる話」「戻らない刻」「説話」「かたりべ」「怖い空」など具体的なものだが、個展の直前に考えた言葉を展示当日初めてこれはどれにしようかなと個々の作品に付けるのだという。野見山では題名はモチーフと関係がない。
 (未亡人所蔵)