山本弘の作品解説(58)「独りの道」



 山本弘「独りの道」ボードに油彩、F10号(53.0cm×45.0cm)
 1968年制作。山本弘38歳のときの作品。51歳で亡くなる山本の中期の作品。具象的な作風から後期の抽象的な作風に移り変わるころの過渡的な作品か。左手に弧を描くように描かれているのが道なのか。その下には流れるような紋様が描かれている。中央の黒く長い棒状の形は人なのだろうか。右上には渦巻くような黒雲が見られる。長く伸ばされた棒状の人のような形や左の渦巻きからゴヤとかエル・グレコへの連想が湧く。
 裏面には「独りの道 1968.6 山本弘」の文字が、脳血栓の後遺症で不自由になった手で書かれている。初めて会った翌年、こういう大きな絵は売れないんだ、持っていきなさいと頂いた。あれからもう50年になる。
 今年も9月に渋谷の画廊で個展を予定している。そこに展示する予定。