仕事の極意

 私の考える仕事の極意を紹介したい。これは以前も書いたことだが再録する。


 まず重要なモットーを紹介する。

・仕事に関しては「面倒」と言わない。

 仕事というものは総て面倒なものなのだ。あえて面倒なことをして対価を得ている。仕事に対して面倒だと言ったらある種の自己否定になってしまう。だからその言葉を使わない。私は新入社員には必ずこのことを言ってきた。そして自己に対して面倒という言葉を封印すると、いつしかどんな仕事に対しても面倒だと思わなくなる。その結果仕事に対するストレスが大幅に軽減されることになる。
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 また、仕事の大きな一面は対人関係だろう。常識的な事柄がまったく通じない人間がいるものだ。そのような時の呪文がこれだ。

・愚かを相手のたたかいには神も手を焼く。

 これはドイツの詩人シラーの句だという。ジョン・ル・カレの『スマイリーと仲間たち』(ハヤカワ文庫)で知った。神ですら手を焼くのだ、愚かを相手とした時には。常識さえ通用しないのだ。仕方ない。
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 さらに無知蒙昧の輩を相手にしなければならない時もある。

・蟹は己の甲羅に似せてその穴を掘る。

 自分の大きさでしか相手を理解できない輩がいるのだ。蟹のような輩が。蟹や愚かを説得することはほとんど至難の技なのだ。そう考えて自分を納得させてきた。
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 最後に、一番の極意はこれだ。ちょっと西田幾多郎の絶対矛盾的自己同一みたいだが、

・仕事は一人ではできない。しかし人に頼ってはできない。

 

 

スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))