ジョン・ル・カレが亡くなった!

  イギリスのスパイ小説作家ジョン・ル・カレが12月12日夜、亡くなった。89歳だった。ル・カレは『寒い国から帰ったスパイ』で大成功を収め、その後、のちにスマイリー3部作と呼ばれる連作『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』『スクールボーイ閣下』『スマイリーと仲間たち』でその地位を不朽のものとした。その後のル・カレは傑作が多いが、私が1点付け加えれば『パーフェクトスパイ』になる。

 私が最も愛する作家はル・カレとSF作家のスタニスワフ・レムだ。一般にル・カレはスパイ作家、レムはSF作家として、純文学作家たちの格下に置かれている。二人に直接共通するのは娯楽小説とか大衆小説とか分類されることだろう。二人の小説はとても面白い。しかし、二人とも大衆には決して好まれない。ル・カレの作品は登場人物が多く、その多数の登場人物の個性が見事に書き分けられている。簡単には読み通せないだろう。そして単なるスパイ小説でないのは、人間存在の深いところを描き切っているからだ。その洞察力は純文学作家たちもなかなか及ばない。

 もう一人のレムはポーランドの作家だが、宇宙や未来世界を舞台に、人間という生物を徹底的に相対化し、有機物が関与しない知性や、地球なんかが何十億年も遅れた文明でしかないことを見事に描いてみせてくれる。

 いままで、二人の作品についてこのブログでも取り上げてきたが、ここでは、ル・カレの『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』を紹介したものと、ほとんど知られていないがBBCが制作し、NHKが放映したテレビドラマ『偽装の棺桶』についての簡単な紹介を、下にリンクしておく。『偽装の棺桶』はもう40年は前のものだが、NHKアーカイブに残っているなら再放送を望みたい。

 

 

ル・カレ『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』に圧倒される

https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20081229/1230511580

 

 

ル・カレ原作のテレビドラマ『偽装の棺桶』

https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20120218/1329519426