木村泰司『ゴッホとゴーギャン』を読む

 木村泰司『ゴッホゴーギャン』(ちくま新書)を読む。印象派の画家たちを紹介し、ピサロ印象派の長老として語り、新印象派のスーラ、シニャックを取り上げる。
そして本命はやはりセザンヌゴッホゴーギャンだ。3人の伝記が比較的詳しく綴られる。近代絵画が彼から始まったとされるセザンヌ

ニコラ・プッサンを自然の上に甦らせようとした試みたセザンヌは、規律が取れたプッサンの作品のように秩序ある空間構成を表現しようとしたのだった。「近代絵画の父」と称されることの多いセザンヌであるが、やはりプッサンを抜きにしてフランス美術を語れないのである。フランスの画家らしくセザンヌは、明確でバランスのとれた構図と精密なデッサンを重視したプッサン由来の古典主義と印象主義の融合を図ったのだ。

ゴッホはアルルでたくさんの傑作を生みだす。しかしゴーギャンとの確執で耳切事件を起こしたゴッホはサン=レミへ、そしてオーヴェルへ移り、ここでもまた傑作を生みだしていく。オーヴェルでは2か月間に70点も描いている。油彩画だけでも900点近い作品を残したゴッホは生前ほとんど認められることなく自殺してしまった。
 ゴーギャンもヨーロッパからタヒチへ去っていく。画家としてヨーロッパでは成功しなかった。タヒチでは現地人のモデルや召使をモデル兼愛人にする。ゴーギャンが何人もの少女妻を娶ったのに対して、ゴッホはいつも年上の娼婦や未亡人と同棲していた。二人のこの懸隔は何なのか。
 ゴッホゴーギャンセザンヌの絵は知っていても、伝記までは詳しく知らなかったので、教えられることが多かった。画家たちの影響関係も紹介されていて、とても参考になった。

 

 

カラー新書 ゴッホとゴーギャン (ちくま新書)

カラー新書 ゴッホとゴーギャン (ちくま新書)