山本弘の作品解説(35)「芝塀」


 山本弘「芝塀」油彩、F10号(53.0cm×45.5cm)

 1978年制作。1978年10月の飯田市中央公民館での個展で発表された。題名の芝塀は柴塀の意味だろう。「お爺さんは山へ柴刈りに」のあの柴だ。飯田地方ではしばしばこの柴で家の周りに塀を作っていた。それを描いているのだろう。ただ最近はもうこんな粗末な塀を見かけることがなくなった。そんな柴塀に美を見るとは山本らしい。他の誰もこれを描こうとはしないだろう。もちろん山本が描けばこの粗末な柴塀が繊細な作品に変わる。灰色や黄色、黒、赤、白が微妙に混ざっているところはたしかに現実の柴塀の再現だ。そうか、地味な柴塀はこんなに美しかったのか。山本はいつも人が気づかないところに美を発見している。


山本愛子所蔵)