ヒロ・ヤマガタの語ったこと

 7月14日の朝日新聞夕刊にヒロ・ヤマガタへの聞き書きが載っている。ひと頃街角に仮設されたギャラリーで若い娘たちを販売員にして大量に売られていた絵があった。それも数十万円から百万円を軽く越えた値段で。本物だから資産になるとか、いい加減なことを言って20歳そこそこの若者を相手に売りさばいていたのがヒロ・ヤマガタを筆頭とするイラスト版画だった。ギャラリーを覗くとアンケートを書かされて、年齢欄が、20歳未満、20〜22歳、23歳以上の3つの選択肢から選ぶようになっていた。20歳未満はクレジットが組めないし、23歳以上は大人だから説得しづらい、20〜22歳がカモなのだろう。

 ーー欧米ではレーザー光線を駆使する美術家として知られていますが、日本では、彩り鮮やかな街の風景など、シルクスクリーンの版画のイメージが強烈です。
 あの漫画の絵をやり出したのは70年、万博のころです。(中略)
 漫画の絵は日本の業者が強引に売ったりしたため、ぼくにはヤクザがくっついているとか薬漬けだとかいう評判が広まって、企業の仕事は切られました。非常にはがゆい思いをしたんですねどね。
 そんな業者とかかわりを持ちたくなかったから、あの版画はやめました、89年に。でも、一般の人たちは良く思ってくれてる。ぼくの気持が伝わってるんですわ。

 ふざけたことを言っている。「漫画の絵」だ! ギャラリーでは芸術作品だと言っていたじゃないか。シルクスクリーンを数百枚も刷って、それを数十万円で売っていたのだ。ほとんど印刷のポスターにすぎないのに! 日本の業者なんて他人事のような言い方をしているけど、若者たちを食い物にしてずいぶんもうけたのではなかったか。私の部下の女性デザイナーもやめろと言ったのに50万円の「作品」を買っていた。