椋鳩十の顔、村の顔

mmpolo2007-09-05




 椋鳩十は長野県喬木村出身の童話作家。本名久保田彦穂、1905-1987。母親を早くに亡くし、継母との折り合いが悪く、法政大学文学部卒業後鹿児島の女学校へ赴任し、故郷へはあまり帰らなかった。鹿児島を第二の故郷とし、鹿児島県立図書館長を長く務めた。晩年故郷の生地へ家を建てて住みたいと思ったが、土地は人手に渡っていて近くの土地を手に入れてそれで満足しなければならなかった。
 現在86歳の私の母は椋鳩十より16歳年下だが、子どもの頃椋を身近に見ている。学生の頃の彦穂さは髪を肩まで伸ばしていた。生家がすぐ近くだったのだ。私は子どもの頃椋の童話をあまりよく読んだ記憶がない。少しは読んだだろうが。20歳前後の乱読の頃、ようやく椋も読んだ。そこに掲載してある作家の顔写真を見て驚いた。私の祖父によく似ているのだ。同じ村の住人というだけで二人に血縁関係はない。ただ生家が数百メートルという近さなのだ。おそらく昔から村内での結婚が繰り返されたのだろう。血が濃く村の顔ができているのだ。椋鳩十の顔は村の顔の典型的な一つなのだろう。先に紹介した、故郷も名前も捨てた画家若栗玄さんも同じような顔をしている。若栗さんはずっとハンサムだけれど。
 昔竹下首相が行った故郷創生(各市町村に1億円ずつ配った政策)で、村は椋鳩十記念館を作った。村立図書館も兼ねている。出来たばかりの頃、母がお詣りに行って来たよと言っていた。母さん、それちょっと違うんだけど。
(写真は椋鳩十