高橋秀実『悩む人』を読む

 高橋秀実『悩む人』(文藝春秋)を読む。副題が「人生増段のフィロソフィー」とある。高橋は読売新聞の「人生相談」の回答者をつとめていたことがあった。本書はその時の相談と回答に、『文学界』に連載したエッセイ「悩む人」を組み合わせたもの。読売新聞の「人生相談」は長い歴史を持っていて、毎日掲載されている。社会の縮図にもなっていると社会学のデータとしても有効なのだと聞いた。
 朝日新聞に週1回掲載される人生相談「悩みのるつぼ」は、ユニークな回答の面白さで売っているので簡単には比べられないが、「人生相談」の高橋の回答はつまらなかった。いや、これが正統の回答かもしれないが。
 エッセイに至ってはそれに輪をかけてつまらない。以前、成毛眞が『面白い本』(岩波新書)で、高橋秀実『はい、泳げません』(新潮文庫)について、「間違いなく大爆笑してしまうので、電車の中で読むと大変なことになる。/本書は、エンタメ系ノンフィクション界ではイチオシの作家である高橋秀美が、身をもって体験した水泳教室の一部始終が書かれている」と紹介していて、期待して読んだが少しも面白くなかった。爆笑どころか微笑も浮かばなかった。そのことをちゃんと覚えていれば本書を読むこともなかったのに。その「エンタメ系ノンフィクション界ではイチオシの作家」という称号は何だったのか。

 

 

悩む人

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