NHKニュースを見ていたら、水泳の跳び込み競技でアナウンサーが、跳び込んだ選手が「入水(にゅうすい)の前に云々」と叫んでいた。入水と発音するのは読みも意味も違うのではないかと思った。
もう60年近く前になるが、私が中学生のころ、夏休み前に学校からプリントが配られた。水泳でプールや川に入水する前には体操をすることと書かれていた。夏休みが終わったあと、担任の教師から、プリントに「入水」と書いてあったことに対して父兄から指摘があり、これは「じゅすい」と読んで水に入って自殺することを意味するから、水泳で水に入ることにこの言葉を使うのは適切ではないので訂正するとのことだった。
その記憶があったので念のために手元の『広辞苑』第4版(1991年1刷発行)を引くと、なんと「入水(にゅうすい)」が「水泳などで、水に入ること。」と載っていた。「入水(じゅすい)」は「水中に身を投げて自殺すること。身投げ。投身。」とある。水泳で水に入ることを入水(にゅうすい)というんだと驚いた。
たまたま古い『広辞苑』第3版(昭和58年第1刷発行)があったので見てみると、「入水(にゅうすい)」は(じゅすい)を見ることとあって、(じゅすい)には自殺の意味しかなかった。
すると、昭和58年=1983年から1991年の間に新しく水泳などで水に入ることを「入水(にゅうすい)する」という意味が付け加わったようだ。おそらく学校現場などで普通に使われるようになって、辞書に登載されることになったのだろう。