相見満『分類と分類学』を読む

 相見満『分類と分類学』(東海大学出版会)を読む。分類について、人がどのように生物を分類してきたかをていねいに紹介している。リンネが分類を体系化しラテン語を用いた種の2名式命名法を確立した。界、目、属、種という階級を設けて階層的な分類法を確立した。
 ダーウィンが現れて、種が固定的なものではなく、自然選択によって変化=進化することを主張した。その後ダーウィンに対する批判や擁護を通じて、「種」についての定義が議論されてきた。シンプソン(1961)の種の議論が紹介されている。

……実際に分類されるのは何か? この点はあまりに本質的で、しばしば誤解されてきたので、その答えは分類学に関しては何にもまして基本的なものである。それは自然の中に実在する単位である。その代表的なものは個体である。ある1つの個体はある集団に含められるだろう。この行為はしばしば個体を分類すると呼ばれるが間違いである。この過程はその個体がどのグループに所属するのかということで、(個体の分類ではなく、これは同定するということである)、分類と一緒にするわけにはいかない……。分類の対象は常に集団であり、互いに類縁関係で結ばれた生物集団であると広い意味で定義される。

 最近、系統発生に基づく分岐分類学が提案されている。これは分岐的系統発生をそのまま分類学に翻訳するというものであり、分類群の名称を分類群の観点から定義しようとするものだ。これまでのリンネ階級の名称は廃棄され、その結果、大混乱を引き起こし収集がつかなくなるとBentonは批判する。

 生物分類はすべて人が作り上げたものである。自然界に固有の唯一で正しい未発見の分類などというものはない。

 生物分類には2つの機能がある。実用的(普遍的な参照体系)であり、しかも一般的(比較進化生物学では階層構造が重要)であることである。分類が安定していることが不可欠である。分類は情報を蓄積し、有効に活用できるものでなければならない(Benton, 2000)。

 

 

分類と分類学: 種は進化する

分類と分類学: 種は進化する