ブリジストン美術館と三菱一号館美術館

 数日前に京橋のブリジストン美術館へ「印象派はお好きですか?」展を見に行った。ピサロ、マネ、モネ、シスレーセザンヌルノワール、ゴーガン、そしてコロー、クールベ、ルソー、ボナール、マティスピカソ、ルオー、ヴラマンクデュフィと本当に優品が揃っている。さすがブリジストン、美術はお金のあるところに集積する。招待券をもらわなかったら行かなかったが、行って良かった、堪能した。
 昨日は今年新しく開館した丸の内の三菱一号館美術館へ「マネとモダン・パリ」展を見に行ってきた。マネとその周辺の画家たちが集められているが、タイトルどおりマネの作品が多い。大作は少ないが、小品でも優れたものが見られる。いや、マネが優れているのだ。
 こうしてまとめて見ると、マネは印象派とは少し違うことがよく分かる。モネやルノワールに比べると少し古く、印象派からは外れているが、画家としては彼らより優れていると思う。吉田秀和が「マネの肖像」で指摘しているように黒が印象的だった。
 これらは三菱の所蔵品かと聞くと、ほとんどオルセー美術館から借りたのですとの答えだった。
 マネも良かったが、三菱一号館の建物も興味深かった。明治27年にコンドルが設計して建てられたこのビルは小さな部屋が連続している。それは近代的なビルとは全く違う作りだ。オーソン・ウェルズが監督した映画「審判」だったか「市民ケーン」だったかの冒頭では、広いスペースで大勢のタイピストが一斉にタイプをしていたが、その空間の作り方は、三井物産の大きなビルによく似ていた。物産のビルは長辺100mもある建物の真ん中に広い廊下を通し、その両側に途中何も仕切のないだだっ広い事務スペースをとっている。これが近代的なビルで、三菱一号館ビルとは真逆の設計思想だった。
 三菱は三井記念美術館に対抗して作ったのだろうか。それならとても良いことだ。お金のあるところがもっともっと美術に投資してほしい。また楽しみな美術館が増えた。


印象派はお好きですか?」展:ブリジストン美術館(7月25日まで)
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/
「マネとモダン・パリ」展:三菱一号館美術館(7月25日まで)
http://mimt.jp/
三菱一号館美術館は、水・木・金は午後8時まで開館している。