出光美術館の富岡鉄斎展が始まった


 東京丸の内出光美術館で没後90年富岡鉄斎展が始まった(8月3日まで)。ちらしのテキストより、

没後90年を迎えた近代文人画の巨匠・富岡鉄斎(1836-1924)。幕末・明治・大正という激動の時代を生きた彼は、学問の道を志し、儒学者として大成します。その傍ら、書画の制作にも専心し、近代の京都画壇で一躍脚光を浴びる存在となりました。とくに晩年に描いた作品には、今日でも格別の評価があります。大胆な筆勢と細やかな筆触とが見事に融け合った豊かなマチエール、また墨という極めて難しい素材を丁寧かつ繊細な感覚で使いこなし、透き通るほどに瑞々しい画趣を完成させました。(後略)

 文中「とくに晩年に描いた作品には、今日でも格別の評価があります」とあるように、鉄斎は70歳代までは若描きと言われ、80歳からの画業の評価が高いことが定説となっている。本展ではその80歳代に描かれた作品が大半を占めている。たしかに晩年の作品は力強い。驚くのは本展が出光美術館の所蔵作品で構成されているということだ。さすが出光美術館
 私が初めて鉄斎を見たのは1971年だった。ルネ・マグリット展を見るため東京国立近代美術館に行ったとき、ついでに階上の常設展を見た。そこで鉄斎の「青緑山水図」6曲1双の大きな屏風を見て驚いた。こんな優れた画家がいたのだ! いま見てきたばかりのマグリットが吹っ飛んでしまうくらいの衝撃だった。以来都内で開かれる鉄斎展はほとんど見てきたと思う。鉄斎こそ近代日本のまぎれもない巨匠だろう。
 ささいなことだが、本展のちらしにある「激動の時代を生きた彼は」の「彼」という言葉が鉄斎に相応しくない気がする。「彼」という代名詞は翻訳語であって、明治大正を生きた画家に使うことに違和感を感じてしまう。
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鉄斎 TESSAI
2014年6月14日(土)−8月3日(日)
10:00−17:00(金曜日は19:00まで)
月曜日休館(ただし7/21は開館)
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出光美術館
東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階
ハローダイヤル03-5777-8600
http://www.idemitsu.co.jp/museum