コレクターの発想、画商の発想

 今年1〜2月、新宿区にある佐藤美術館で「山本冬彦コレクション展〜サラリーマンコレクター30年の軌跡〜」が開かれた。山本さんはサラリーマンのかたわらこつこつと美術品を収集して、それが30年間で約1,300点のコレクションになり、その中から厳選した160点の作品を並べていた。
 最近銀座の画廊でXさんに会ったとき、この山本冬彦コレクション展について感想を聞いた。Xさんもサラリーマンコレクターで、駒井哲郎の版画作品は70点も所有しているという。やはり今年の冬頃、港区外苑前のギャラリー「ときの忘れ物」で「X氏コレクション展」を開き、駒井哲郎作品を並べている。山本弘の作品も2点持っておられるという。
 山本冬彦さんのコレクション展をご覧になっていかがでしたか? 1割だね。え、1割って何ですか? あの中で僕がほしいのは1割だったよ。でもどうせ譲ってはくれないし。
 何と、展覧会の評価とか蒐集の傾向とかには興味を持たず、ひたすら自分がほしいかほしくないかだけに興味を持っている。なるほど、これがコレクターの発想なのだ。
 それで思い出したのは画商の発想だ。T画廊のN氏は、美術館は作品の墓場だと言い切った。なぜですか? いったん美術館へ入ったらもう市場に出てこないだろう。市場に出てこない作品は死んだも同然だ。私は美術館へ収まるというのは、美術すごろくの「上がり」だと思っていたから、この発言は本当にびっくりした。なるほど、これが画商の発想なのだ。


佐藤美術館
〒160-0015 東京都新宿区大京町31-10 
TEL.03-3358-6021
http://homepage3.nifty.com/sato-museum/index.html


山本冬彦さんの著書

週末はギャラリーめぐり (ちくま新書)

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