佐多稲子「夏の栞(しおり)ー中野重治をおくるー」は新潮文庫から発行されていたが、しばらく品切れだった。それが今回、講談社文芸文庫から発行された。その新聞広告から、
文学的友情で支え合った中野重治との永遠の別れを綴る感動の名作。
ここには何の誇張もない。そのとおりなのだ。毎日芸術賞と朝日賞を受賞している。最後が近い中野重治を病院に見舞う佐多稲子、中野と佐多の半生の歴史が思い起こされる。
私は2007年1月3日に、
でこう書いた。
佐多稲子が書き辛そうにして書いていることから読みとれるのは、微かではあるがくっきりとした佐多と中野の秘められた愛情だ。そのことを佐多が屈折してこのように書いていることを見事だと思うのだ。
中篇とはいえ、とても優れた小説だ。戦後日本文学の第一級の作品だろう。多くの人にぜひ読んでほしい。
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