坂口弘の新しい歌集「常しへの道」

 以前、朝日新聞の朝日歌壇に掲載された坂口弘の短歌を紹介したことがある。
朝日歌壇に掲載された坂口弘の短歌I
朝日歌壇に掲載された坂口弘の短歌II

 坂口弘は死刑が確定して、もう外部へ手紙を書くことを禁じられた。朝日歌壇で彼の短歌を見ることはもうなかった。
歌集 常しへの道 それがこのたび角川書店から、坂口弘「歌集 常(とこ)しへの道」が発行された。死刑確定後の短歌からの自選集だ。佐佐木幸綱が指導していたという。タイトルは旧約聖書から採っている。

魂を贖(あがな)う価は高く
とこしえに、払い終えることはない。

 死刑が執行されたニュースに過敏に反応し、それを指示した法務大臣を非難している。短歌は啄木の影響で3行で書かれている。

雨の日は/傘の中をし恋ふるなり/寸時たりとも監視ゆるまず
明日もしお迎へあらば/今際(いまは)なる父の食(は)みしごと/林檎食みたし
これが最後/これが最後と思ひつつ/面会の母は八十五になる
縛られたるをみなの君が/独り言なす場面思ひ/涙し流る
かの歌人が新聞にまた/われの歌の凡作のみを/載する悲しみ

 死刑が確定する前の朝日歌壇へ投稿していた頃の歌の方が優れていた。