鬼海弘雄『SHANTI』を見る

 鬼海弘雄『SHANTI』(筑摩書房)を見る。インドの子どもたちを撮った白黒の写真集。170点近くの写真が1ページ1枚掲載されている。鬼海は浅草寺の境内に来るちょっと変わった人たちの肖像写真で有名だ。境内で待っていて、変な人が来ると声をかけて撮っている。
 本書は1979年から2016年まで20回ほど訪ねたインドの、子供たちを中心にした写真集だ。いつもの通り撮影データや被写体の詳しいキャプションはない。キャプションは「工芸村の娘」「プラスチックの腕時計」「猛暑期の朝の浜」などと素っ気ない。「猛暑期の朝の浜」には15人ほどが寝転んでいるのが写っている。インドの人口の多さがしのばれる。「プラスチックの腕時計」などというキャプションは、わざと本質を外した命名なのだろう。
 浅草寺に来る変わった人たちを撮った『ペルソナ』シリーズは、モデルたちの異様さが面白かった。だがインドの子どもたちを撮ったこの写真集は『ペルソナ』の面白みには欠けると言わざるを得ない。
 本書にはノンブル(ページの数字)が付されていない。写真にはすべて通し番号が付けられているので仮に引用するとしても混乱はないのだろうが、やはりノンブルは振っておいた方がいいのではないだろうか?
 なおタイトルのSHANTIシャンティはサンスクリットで「平安、平穏」とある。確かヨガのときにもこの言葉を唱えていた。T. S. エリオットの『荒地』の最後も「シャンティ シャンティ シャンティ」となっている。

 

 

SHANTI (単行本)

SHANTI (単行本)