大宮政郎の銅版画がおもしろい

 東京銀座のStepsギャラリーで「批評家展」が開かれている(6月27日まで)。これはギャラリーが選んだ批評家5人がそれぞれ作家をひとり推薦し、推薦された作家の作品を展示して、それに批評家の批評文を併せ展示するという独創的な企画。ただし批評文はギャラリーの壁面に展示するのみでプリントは用意されていない。作品の横に展示されている批評文をその場で読むというものだ。批評家と作家の組合せは次のとおり。
・仙仁 司×大宮政郎
・宮田徹也×小池野豚
・本江邦夫×三輪田めぐみ
・吉岡まさみ×槇野 央
・ワシオ・トシヒコ×岩崎巴人
 この企画はなかなかおもしろかった。
 だが、ここに紹介しようというのは、奥の事務所に展示されている小品で、大宮政郎の銅版画だ。これが不思議だった。どうやって制作しているのだろう。大宮が在籍していたので訊いてみた。
 まず脱脂綿を圧着して薄く固いものを作る。それを紙の代わりにして銅版画を刷る。平たくなっている綿を手でもみほぐしながら、徐々に縦に長く伸ばしていく。写真製版された有名な画家たちの顔が、縦に引き伸ばされる。結果このような不思議な作品ができあがる。ちなみにこれは1980年代ころ制作したものだという。






 作品になった5人の画家は、クレス・オルデンバーグ、マルセル・デュシャンジャスパー・ジョーンズジャクソン・ポロック、それにピカソだ。あれ、どれがどれだっけ?
 作家の大宮政郎は、1930年岩手県水沢市生まれ。1948年に岩手美術研究所入所、1949年に岩手美術工芸学校油画科に入学。以来岩手芸術祭や自由美術展に出品し、1957年には東京のサトウ画廊で個展を開いている。この綿に銅版画を刷る方法は今まで何度も制作法を公開してきたが、続けて制作している人は誰もいないという。私も初めて見た技法だった。
 なお、批評家のひとり吉岡まさみはこのStepsギャラリーのオーナーで、作家でもある。つい最近はセルビアに招聘されて、国立放送美術館で倉重光則とともに大規模な展覧会を行ってきたばかりだ(現在まだ展示中)。セルビアの国立放送美術館というのは、日本で言ったらNHK美術館に相当するようなものでとても大きく、オープニング・パーティーにはVIPたちを含めて300人出席したという。吉岡のインスタレーションも大変好評だったらしい。
 今回の「批評家展」は来週一杯展示されている。一度覗いてみれば面白いだろう。ただしStepsギャラリーは6階にあり、このビルにはエレベーターがない。階段は55段くらいあるが、なにJR亀戸駅の階段が43段で、地下鉄の階段でこの倍以上ある駅もあるのだから。


吉岡まさみのBLOG(セルビアの展示について報告している)
http://stepsgallery.cocolog-nifty.com/
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「批評家展」
2015年6月15日(月)−6月27日(土)
12:00−19:00(土曜日17:00まで、日曜日休廊)
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Stepsギャラリー
東京都中央区銀座4-4-13 琉映ビル6階
電話03-6228-6195
http://www.stepsgallery.org