美術家の『浜田浄 作品集II』(ギャラリー枝香庵出版企画部)が発行された。浜田は1937年高知県生まれ。1961年に多摩美術大学油科を卒業している。1964年、東京杉並区のおぎくぼ画廊で初個展、以来数多くの個展を開いている。
2002年、『浜田浄 作品集 1973-2001』(現代美術資料センター)が発行されている。今回の作品集IIは「2002-2013」とされており、最初の作品集以後の浜田を扱っている。
冒頭、三田晴夫の「瞠目すべき主題と変奏〜浜田浄の軌跡」が掲載されている。三田は美術ジャーナリストとなっているが、毎日新聞の名物美術記者だった。とくに抽象作品やインスタレーションなどの展評は見事で、読売新聞の芥川喜好とともに、新聞社の美術記者として双璧をなしていた。朝日新聞にも名物記者はいたが、二人に比べると一歩後塵を拝していた感が否めない。
三田は浜田の制作の推移をていねいにたどって解説していく。かねこ・あーとギャラリーなど、浜田の画廊での発表をリアルタイムで見てきた批評家にこそできる理解だろう。浜田は最初から禁欲的な抽象作品だけを制作してきた。漆黒地の画面に配列された赤の線形群。ついで鉛筆で真っ黒に塗りつぶされたドローイングの連作。また塗り重ねた油彩をカッターナイフなどでえぐって掘り出した線痕群。ペインティングナイフで絵具をじかに点描していく連作、等々。もの派の影響も指摘し、最後にマティスへの連想を語っている。
三田も参照しているのが、本書後半1/3を占める笹木繁男による浜田浄年譜だ。これはきわめて労作で、実にていねいに浜田の業績を記録している。公立美術館での展示の記録はもとより、街の小さなギャラリーでの個展はもちろん、グループ展への参加もことごとく探しだし、可能なものは出品作品の詳細まで記録している。公立美術館の学芸員が大家の回顧展にあたって作成する年譜もなかなか及ばないだろう。それを笹木という在野の研究者が一人で成し遂げたことに頭が下がる。すばらしい功績だと言える。
本書は一般の書店では扱っていなくて、銀座のギャラリー枝香庵等で手に入れることができる。定価2,500円+税となっている。
今回、出版記念ということで、銀座と京橋の2軒のギャラリーで浜田浄展が開かれる(9月1日〜10日ないし13日)。とくに9月1日は京橋のギャラリー川船で夕方6時からオープニングパーティが開かれる。会費3,000円で、作品集が付いてくるという。
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浜田浄個展
2014年9月1日(月)〜9月10日(水):ギャラリー枝香庵
11:30-19:00(初日・日曜・最終日のみ17:00まで)
2014年9月1日(月)〜9月13日(土):ギャラリー川船
11;00-19:00(日曜・祭日休廊)
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ギャラリー枝香庵
東京都中央区銀座3-3-12銀座ビルディング8階
電話050-3452-8627
http://echo-ann.jp
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ギャラリー川船
東京都中央区京橋3-3-4フジビルB1
電話03-3245-8600
http://www.kawafune.jp/