ロジャー・パルバース『驚くべき日本語』がおもしろかった

 ロジャー・パルバース/早川敦子・訳『驚くべき日本語』(集英社インターナショナル)が面白かった。パルバースはアメリカ生まれ、ロシア語とポーランド語を学び、23歳で来日し日本語を学んだ。いまでは4カ国語を話すという。とくに日本語では小説も書いている。
 パルバースは、日本語は話すには大変やさしい言語で、世界語(リンガ・フランカ)にも向いていると驚くべきことを言う。そのことを、具体的な例をあげて説得する。
 日本語は英語と比べて語彙数が少ない言語である。少ない語彙でありながら、語尾変化で多様なニュアンスを表現できる。そのことは学ぶことがたやすいことにつながる。また動詞の変化や時制がシンプルである。日本語は曖昧だと言われるが、それは「和」のために曖昧に表現しているのであって、おたがいにその意味を明確に理解している。曖昧な表現は自己主張による衝突を和らげるためのものなのだ。
 また日本語の名詞は「てにをは」を使うだけでどんな「格」にもなれる。さらに省略が容易で、簡単に省略語が作り出せるとして、マジ、サツ、ブクロ、コンビニ、カツカレー、アラサー、アラフォー、アラカン(アラウンド還暦)、アメフト、ワーホリ(ワーキングホリデー)、コラボ、関空関西空港)、院生、着ぐるみ、KY、JK、シュワちゃんなどを挙げている。
 現在英語が世界語の地位を獲得しているのは、英米がひとえに経済的軍事的に強力なせいで、将来はあるいは中国語が英語に取って代わることがあるかもしれないと言う。過去の状況によっては日本語が世界語であっても不思議ではなかったと。
 日本語なんて難解な言語で、極東の特殊な言葉だなんて思っていたから、目から鱗が落ちる想いだった。