東京京橋のギャラリー川船で山本麻世展が開かれている(10月12日まで)。山本は1980年東京都生まれ、2005年に多摩美術大学大学院美術研究科工芸専攻陶コース博士前期課程を修了している。ついで2008年にオランダアムステルダムの美術学校の陶芸学科を卒業し、2009年にはアムステルダムの別の美術学校のファインアート学科を中退している。その後オランダと韓国に滞在して制作し、内外のアートフェアに参加しているが、多く野外展示とのこと。2017年にギャラリー川船で初個展。
今回のテーマが「母乳で育てた? それともミルク?」というもの。山本は3歳の乳児を育てている。乳児が初めて飲む初乳は栄養価が高く特別なものだというが、初めてのおっぱいは全く出なくて、何度も「石垣のような乳首をしごいた」と書く。そのアップで見た乳首からおっぱいが滲み出す様子を作品にしている。とは言ってもリアルに再現するのではなく、既製品で幼児用の大きなピースのジグソーパズルを加工して、それを表現している。6列6段=36ピースの大きな作品から1ピースだけの小品まで並んでいる。
(大きな作品の部分)
ついで白い紙に鉛筆のようなものでフロッタージュしたものがある。どんど焼きの終わったあと、地面に拡がった炭に紙を押し当ててフロッタージュしたものだという。フロッタージュは普通紙の上から鉛筆などで擦るが、紙の上から素手で擦っているのが新しい。
額装された4点の作品が面白かった。娘の通う保育園からお母さんたち全員に運動会に使う万国旗の制作を依頼された。山本は畳の目を使ってフロッタージュし、星条旗を作り上げた。これはまぎれもなくアメリカの国旗ながら、畳の目を使った一見雑な制作方法や星の部分の省略など、直接的ではないアメリカへの批判が感じられる。最近見た最も優れた作品だと思う。脱帽です!
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山本麻世展「母乳で育てた? それともミルク?」
2019年9月30日(月)-10月12日(土)
11:00-19:00(日曜休廊)
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ギャラリー川船
東京都中央区京橋3-3-4 フジビルB1F
電話03-3245-8600
http://www.kawafune.jp/