作家のおもしろい言葉

 墨田区本所のギャラリーカフェニモードで「テキーラ展 本所二丁目アートシーンvol.2」が開かれている(7月4日まで)。細井篤の小さな彫刻や丸野由希子など8人の作品が展示されている。初日のオープニングパーティーで小さな女の子を連れた丸野さんに会い少し話をした。丸野さんの作品は以前何度か見ていたが、しばらく活動がなかったのは出産とその後の育児が忙しかったからのようだ。それで亀山尚子の例を引いて、出産と育児を経験すると、抽象作品を作っている女性作家は色彩に暖色系が増え、植物などの形が画面に現れる傾向があるように思うと言うと、丸野さんが、育児をすると子どもと一緒になって草花を見たり雲を見たりする、こんな小さな花が咲いているよと子どもに見せたくなる、それで画面に具体的な植物などが現れるのでしょうと言われた。
 銀座4丁目のギャラリー58で6月4日の週に個展をやっていた三浦健の話もおもしろかった。三浦さんは、抽象表現主義一神教の国に生まれた、日本のような多神教の風土には合わないのではないかと大胆なことを主張する。そんなことを聞いたのは初めてだった。そういえば、バーネット・ニューマンは作品にSublimeサブライム=崇高)というタイトルを付けている。宇佐見圭司が『20世紀美術』(岩波新書)のなかで、「ニューマンは神ではなかったから、自ら赤い平滑な画面をつくったのである。」と書いている。若い作家の言葉とベテランの言葉が通底しているかのようだ。
 それにしてもアメリカの抽象表現主義一神教という風土から説明するなんて、何というユニークな考え方なんだろう。三浦健の制作の行方がとても楽しみだ。
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テキーラ展 本所二丁目アートシーンvol.2」
出品作家:アリーナ・アサルハノワ、今村仁、大沼蘭、荻野僚介、田中俊之、藤原裕策、細井篤、丸野由希子
2012年6月15日(金)−7月4日(水)
12:00−18:00(土日−17:00、木曜休廊)
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ギャラリーカフェニモード
東京都墨田区本所2-17-3
電話03-3625-6860
http://www.cafenimodo.com