中西夏之の不思議な講演

mmpolo2007-05-06




 中西夏之展が東京都現代美術館で1997年3月に開催され、その時作家による講演会も開かれた。中西夏之ハイレッドセンター高松次郎赤瀬川原平中西夏之)のメンバーの一人。このユニット名は3人の姓の頭の一字を英語に変えたもの。万博のとき銀座の大通りを掃除するなどのパフォーマンスを演じた。
 中西はキャンバスに無数の洗濯ばさみを付けたり、絵に弓を取り付けたりした絵が特徴だが、紫と白の美しい色彩の筆触だけの絵もすばらしい。
 長い棒の先に絵筆を縛り付けて離れた所から描く。これは手が自由に動かないようにしているのだという。
 講演会がユニークだった。講演を聞いていて何が言いたいのか全く分からなかった。途中、学芸員に「ここまで私が何を話してきたかまとめてください」と振った。賢い学芸員だったので「絵画の制作がいかに大変かということを話されました」とかわした。
 後日、印刷された講演記録を入手して読んだが、やはり何を言いたいのか分からなかった。絵はすばらしいのに。
 講演に当たって中西は「さまざまな湖の水面標高の比較」という表を配った。それには日本の湖、中禅寺湖や山中湖、諏訪湖、阿寒湖など15の湖の基準水面と最大水深が掲載されている。また世界の湖、チチカカ湖、レマン瑚、死海など12の湖のこれも基準水面と最大水深が紹介されている。
 中西はこの湖の標高が美術制作において重要なのだと不思議なことを言う。

さまざまな湖の水面標高の比較ーこの表を見てどんなことを思い描くか。日本と世界と別の表になっているが一緒に見よう。意外なことに気付くかもしれない。本栖湖、西瑚、精進瑚は底が繋がっているのでどれも等しく900メートルの水面標高であることはよく知られている。また、チチカカ湖は富士山より高いところに水面があり、アフリカのあの巨大な湖、ヴィクトリア瑚は中禅寺湖より低いところにあり、エリー湖オンタリオ湖の間には100m落差のナイヤガラの滝があることなど、それがどんな想像に続き、結びつくのか、興味あるところだ。
中西夏之講演「絵の励ましと日本列島ー創造的地表」(1997年3月16日)

 写真は中西夏之の作品。